お電話でのお問い合わせ017-752-0506
こんにちは、社会保険労務士の本田淳也です。
4月から青森商工会議所会報誌「かけはし」にて新企画がスタートしました。
その名も、あおもり経営実践塾「頑張る経営者を応援し隊」。
企画の流れでナビゲーターを務めることとなり、毎月、経営のサポートをしている専門家の皆さんにご登場いただきます。
4月は見本も兼ねて、私が「社員がイキイキ働く組織作り」をテーマに書かせていただきました。
画像だと見えにくい方もいると思いますので、文章でもアップしておきます。
ご参考になれば幸いです。
経営が難しくなっている昨今、“多くの経営者に有益な情報をお届けしたい”、という趣旨のもと始まったこの企画。
ナビゲーターを務めます社会保険労務士の本田淳也と申します。
来年3月まで経営のサポートをしている多くの専門家にご登場いただきます。
今回は私から社員のモチベーションの仕組みをご紹介します。
日々、経営者からの相談を受けているとよくこんな声を耳にします。
「指示しないと動かない」、「モチベーションを上げたい」、「意識を変えたい」など。
このような声は事業規模とは関係なく、多くの経営者が感じていることですが、「じゃ何から始めればいいの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
相手がひとだけに、数多くのアプローチ策があり戸惑うのも当然の話。
なので、まずは従業員のモチベーションが上がる仕組みから覚えていきましょう。
図表は、ハーズバーグの二要因理論を私がカスタマイズしたもの。
左側は賃金や労働条件、対人関係などの衛生要因で、充分でないと不満をもたらすが、充分であっても満足はもたらされず、やる気を引き起こさないもの。
例えば、給与を5,000円上げました、年間休日を数日増やしました、社内の風通しを良くしました・・・この場合、社員の不満が減少するという効果は見込めますが、だからといってモチベーションが上がる(もしくは持続)ワケではありません。
なんとなく感覚でも理解できるかと思います。
一方、動機付け(モチベーション)要因は、成長機会や承認、やりがいのある仕事などが挙げられ、仕事に対する満足を生み出し、積極的な動機付けにつながってきます。
例えば、仕事内容を上司に褒められた、難しい業務をやり遂げた、自身の成長に手ごたえを感じている、人の役に立つという貢献感を覚えるなどで、衛生要因とは根本的に異なります。
つまり賃金や労働条件を良くしたとしても、不満足は減少するが満足が向上するわけではなく、あくまで不満足の改善にすぎません(離職率の改善にはつながりますが)。
また、仕事への満足を引き起こす要因と、不満足を引き起こす要因はそれぞれ別ものであるから、例えば満足度は充分あるが不満足度も高いといった状況もあり得るのです。
これらから、従業員の満足を向上させモチベーションを上げるには、動機付け要因にアプローチする必要があるということです。
このあたりは図表も見ながら確実に理解してもらいたいところです。
労務管理で意外と盲点になっているのが、従業員の「感情の老化」です。
ひとは年齢を重ねると意欲や好奇心が薄れ、感情が少しずつ衰えていきます。
刺激や変化のない仕事内容であればなおさらで、毎日同じ作業を続けているとマンネリ化し、モチベーションは上がらず、当然ながら生産性にも大きく影響します。
そこで大事なのが、それぞれの仕事でやりがいを感じられるように経営者が仕組みをつくること。
つまり、今の仕事をやりがいのあるものに作り上げるということなのです。
それにはいくつかのアプローチ策がありますが、ここではやりがいと承認欲求について軽く触れたいと思います。
明確な目的や目標があるとやりがいは生まれます。
有名な「教会をみせる」という話を参考にするといいでしょう。
3人のレンガ職人がレンガを積み上げていました。旅人が何をしているのかと訪ねると、1人目の職人はつらい表情で、「レンガ積みだよ。暑い日も寒い日も大変だよ」。
2人目の職人は必死な表情で、「大きな壁を作っている。おかげで家族を養えるからありがたいよ」。
3人目の職人は嬉しそうな表情で、「大聖堂を作っているんだ。歴史的建造物に関われて楽しいよ」。
今の仕事が何につながっているのかを意識することで、単純な作業でもやりがいが大きく変わってくるという事例です。
自分達の仕事の目的はなんなのか、今一度、再確認してみてはいかがでしょうか。
ひとは誰しも他者から褒められたいという思いがあります。
SNSの「いいね」がまさにそれ。
職場で考えると、上司から評価されたい、同僚から認められたいという本能があるものの、このような承認欲求が満たされている従業員はごく一部というのが多くの会社の現状です。
承認欲求を充足するやり方や仕組みは様々ですが、社員のささいな頑張りや努力を見逃さず常日頃、「認める」、「褒める」という意識を経営者や上司が高めつつ、「否定しない」、「話を聴く」、「労をねぎらう」といったことも実践していくと、賃金アップ以上に効果を発揮することでしょう。
また、社員のモチベーションを高めるには、「連帯感」、「成長感」、「貢献感」も必要。
とりわけ貢献感は効果大。
会社に貢献、同僚に貢献、顧客に貢献、地域に貢献などその幅は広い。皆さんの会社でも顧客や取引先から感謝の声が届いていると思います。
でもその声、担当者まで届いているでしょうか。
社内で共有できるような仕組みを作って、社員のやりがいを刺激しましょう。
このようなアプローチをしていくと意識や気持ちは変わっていても、感情を表に出さない従業員もいるため、「どの程度効果が上がっているのかな~」と感じることも多いと思います。
そんな時、見えづらい人の感情を“数値”や“グラフ”といった可視化ができれば、上司も対応策を取りやすくなります。
最近は複数のクラウドサービスでこのようなシステムを提供していて、中でも私のオススメが、組織力向上プラットフォーム「Wevox」(ウィボックス)です。
毎月従業員に3分程度で終わるアンケートに答えてもらい、それを集計・分析することにより「成長に対する承認」、「やりがい」、」「ワークライフバランス」、「達成感」、「上司との関係」等の状況を把握することができ、必要に応じて改善アクションを実行します。
このサービスは余計な機能が付いていないため、月額300円/人と導入しやすい料金プランとなっているのも特徴です。
このような新しいシステムも利用しながら、“社員がイキイキ働く組織”を構築し、人手不足や物価高を乗り切っていただければと思います。
著者プロフィール
社会保険労務士 本田淳也
1975年、深浦町生まれ。社労士業として一般的な給与計算、労働社会保険手続き、労働相談のほかに、社員のやる気アップ向上への取り組みもサポートしている。
SUBARUだよりに「これからの自動車販売店経営術」を連載。
著書「自動車整備業の経営と労務管理」(日本法令)。猫にはまっている48歳。
30年以上前から青森市内に和食ファミリーレストラン「あじ菜」やとんかつ専門店「かつ美亭」などを経営する精養軒。
長年に亘り従業員満足度や社員のキャリアアップを徹底的に追及している松江英代代表取締役専務にお話を聞いてみました。
「創業した父、そして母へ、現在の私たち姉妹に至る62年、“飲食業に携わる者の地位を向上させたい”、“働きやすい職場環境を整えたい”という想いで走ってきました。
労働条件の向上もそうですが、お客様と従業員を対等の立場にしたいと考えていたからです。
このような強い正義感が私の活動の源泉になっていると思います。
20年以上前から「ありがとうノート」というものをやっています。
スタッフ同士で、「あの時に手伝ってくれてありがとう」とか、お客様から言われた感謝の声などを毎日一言書いてもらっています。
恥ずかしかったり、忙しかったりで言えないケースもありますので、感謝の気持ちを伝えることにより、スタッフ間のコミュニケーションが充実したように思います。
特にサービス業はチームプレイですので、このような取り組みはとても大事だと実感しています。
しかし、やり始めた頃はなかなか書いてくれませんでした。
それでも根気よく声がけをして続けたことにより、今では皆が自然と書いてくれるようになりました。
また、スタッフの研修にも力をいれています。
初級、中級、キャリア、未来塾、帝王学といったコースがあり、内外から講師を立てて定期的に開催しています。
忙しいと研修が疎かになりがちですが、現場では学ぶことができないところを座学で習得するのは本人にとっても会社にとってもかなりプラスになると思っています。
実際に受講したスタッフからも「会社が自分を大事にしてくれていると感じる」といった声を聞きます。
店舗経営では、クオリティ、サービス、クリーンリネス(QSC)を大切にし、その象徴として月に1度QSC会議を開いています。
この部分は弊社社長が絶対的な基本中の基本であると特に大切にしており、その意が強く働いています。
これを元に、やるべき事や改善点といった目標を明確に設定し、実施できていたかを振り返り、出来ていなかったらその理由を考え、トライするといった流れをとっています。
例えば、「お客様に料理を提供したら一礼する」といった基本的のところや、実務で気が付いた改善点などが目標として上がります。
これらを口頭と紙ベースで行ってきましたが、10年程前からweb軍師というクラウドシステムを利用して管理しています。
財務、顧客、業務、人材の4つに大別され、それぞれの目標を共有しています。
以前のような個々のメモや受け取る感覚ではなく、皆が同じ情報を共有(見える化)し、会社全体の目標・問題を一緒に考えながら進めていっています。
そうですね~、やっぱり人によっては面倒だったり、恥ずかしいだったりで退職につながったケースはあります。
会社が良かれと思ってやっていることでも、性格的に合わない方もいますので、その辺が難しいところですね。
また、長く続けているとマンネリ化は避けられないと思います。その際はゲームの要素を取り入れたりして、なるべく楽しく続けられるような工夫をしています。
「儲かる」からとか「食べていく」だけだと、これからの会社経営は難しいような気がしています。
今以上に「モノ」から「ココロ」を重視する必要があると思います。
そのせいか一番嬉しい瞬間は多くの“売り上げ”ではなく、“お客様からお褒めの言葉をもらった瞬間のスタッフの笑顔”なんです。
あとは忍耐ですかね!
~取材をしてみて~
人出不足が顕著となっている昨今、社員のキャリアアップや生産性向上は欠かせません。
これらは継続的な取り組みが必須のため、経営者の本気度が試される時代になっていると感じます。
限られたリソースをどこに注ぐか・・・経営判断が問われています。