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仕事の工夫について・・・失敗することを恐れるより、日々の業務に工夫の無いことを恐れた方がいい、と私も思う、青森市の社会保険労務士、本田淳也です。
① 刑事上の責任(前々回紹介)
② 民事上の責任
③ 補償上の責任(前回紹介)
④ 行政上の責任
⑤ 社会的な責任
今回は④と⑤、そして②について触れてみます。
労働安全衛生法違反や労災発生の危険がある場合、機械設備の使用停止や作業停止等の行政処分を受けることがあります。
また取引先(他官庁)からの取引停止(指名停止)処分も考えられます。
そうなると、作業が停止するだけでなく、受注していた仕事自体が無くなり、今後の会社の資金繰りに大きな影響を及ぼします。
一連の流れを考えると、社会全体および業界や地元からの信用が低下することは避けられません。
仕事が受注できない、従業員が辞めていく、募集しても来ない、資金繰りが悪化する・・・
直接コストおよび間接コストにより、会社の存続が危ぶまれます!
まずはこちらの労働契約法をご覧ください。
↓
~労働契約法~
(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
「民事上の責任」を考える上で欠かせないのが、会社に義務づけられている「安全配慮義務」。
これは「災害が起こるかも知れない」という可能性を事前に察知し、その防止策を講じることにより、労働者の安全や健康を守るというもの。
一番最初に紹介した、労働契約法第5条に明記され、さらに民法上の労働契約等に基づく使用者の責務とされており、この義務を怠って労働災害を発生させると、民事上の損害賠償義務が生じてきます。
また、安全配慮義務は、会社が労働安全衛生法を守っているだけでは履行したことになりません。
法定基準“以外”の労働災害発生の危険防止についても、会社は安全配慮義務を負っていると言えます。
つまり、労働安全衛生法上の刑事責任を免れることと、民事上の損害賠償責任は、”必ずしも一致するわけではない”ということ。
大きな労働災害が発生した場合、かなりの確率で安全配慮義務違反による損害賠償が発生すること。
言い換えると、会社が、被災労働者もしくは遺族から損賠倍賞請求を受けるということになります。
会社としては、労災保険給付の限度で責任を免れるものの、カバーされていない精神的苦痛に対する「慰謝料」や、後遺症が残った場合の「逸失利益」(事故によって後遺症を負わなければ得られたであろう将来の収入)については、損害賠償の責任が問われます。
また気になるのは、どの程度まで配慮していれば安全配慮義務を尽くしているか・・・
これについては明確な基準がないため、事案によって判断する事となりますが、実際100%義務を果たしていると認定されるケースは難しいように感じます。(一部過失相殺はありえますが)
賠償額としては、障害の程度や労働者の年齢、収入によって大幅に変わります。
【製材業】玉掛けしていた原木が落下し1級障害・・・1億6,524万円
【建設業】作業員が2階より転落し下半身不随・・・・・・8,323万円
【飲食業】長時間労働による急性心不全で死亡・・・・・・7,862万円
【製造業】長時間労働による脳内出血で全介助状態・・1億9,869万円
このように、ケースによっては高額な損害賠償が発生します!(会社の規模はあまり関係ありません)
また、ご覧のように工事現場での労災事故だけが対象になるわけではありません!
県内において、数千万円の損害賠償を支払っても事業を存続できる・・・そんな会社がどれほどあるでしょうか。
そんな経営リスクを低減させるため、使用者賠償責任保険に加入している会社も一定数あると思いますが、保険料負担や発生率の低さ、知識として知らなかった、などの理由で加入していない事業所も多いように感じます。
ぜひ、この機会に民間の保険加入を検討されることをお勧めします。
しかしながら一番大事なのは、労災事故が起こらないように、しっかりとした予防策をとること。
朝礼や常日頃から注意を喚起したり、ヒヤリハット報告を徹底させたり、機械の構造上ストッパーを設置したりと、労災事故に対する意識を強く持ちながら業務を進めてもらいたいと思います!
労災についてもっと詳しく知りたい方は、以下のような書籍を参考にするといいでしょう。
社会保険労務士 本田淳也(青森市)
← 大ケガや死亡事故といった労働災害が発生したら・・・会社の責任はどうなる?~その二~