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クルマ屋さんが日本政策金融公庫の経営指標を活用するコツ~後半~

前回に引き続き後半です。

従業員1人当たりの売上高

これは生産性を表す指標となります。
ひと言でいうと「従業員1人がいくら稼いだか」といった意味合い。

売上高
—————-
従業員数(パート、アルバイト除く)

たとえば、正社員10名を雇用している売上4億円の会社だと「従業員1人当たりの売上高」は4,000万円です。
ここも比較的分かりやすいでしょう。

「中古自動車小売業」をみてみると、約3,400万円~4,300万
イメージしやすいように月平均(÷12月)にすると約283万円~358万円になります。

シンプルに考えて、営業スタッフ1人が毎月この程度の中古車を販売しなくてはならないということ。
仮に1台平均80万円なら、おおよそ3.5台~4.5台です。

といった理屈になるものの、実際は会社によっては利益率も変わり、また経費支出も大きく異なります。
また、以前大きな中古車店の営業スタッフから「販売ノルマは毎月15台ですよ」と聞いたこともあります。

したがって、この指標はあくまで目安であり、参考にするのと同時に会社にマッチした目標値を設定するとよいでしょう。

つぎに整備業を確認してみましょう。

・自動車一般整備業 約1,450万円~1,650万円(月120万円~137万円)
・自動車車体整備業 約1,200万円~1,460万円(月100万円~121万円)

当然ながら、仕入れのある「中古自動車小売業」よりは大きく減少しています。
とはいっても、1人につき“最低”100万円は売上として稼ぐ必要があるようです。

みなさんの会社と比較していかがでしょうか。
決算書の数値と比べてみてもいいし、もし面倒なら感覚的なもので比較してもいいと思います。

それにより、「ウチは1人当たりの売上が少ないな~」と感じた場合は、以下のような理由が考えられます。

・従業員の作業スピードが遅く、一定の業務量をこなせていない。
・そもそも仕事自体が少なく、手持ちぶさたの時間がある。
・低価格が影響している。
・従業員の人数が多すぎる
(ヒトを育てるため多めに雇用している場合もあり)。

心当たりありますでしょうか。
会社によっては複数あるかもしれません。

できれば現状を把握していただき、少しずつでも改善してもらえると会社の財務内容も良くなり、結果として従業員の待遇も向上するのではないでしょうか。

なお、会社全体の収益性を把握できる「人件費比率」に対し、従業員の生産性を分析できる数値が「従業員1人当たりの売上高」となります。
ただ、収益性と生産性との違いはあるものの、売上がもとになっているのは同じであります。
したがって、分析・改善する際は、双方同時に検討したほうがいいでしょう。

損益分岐点比率

最後に安全性を表す「損益分岐点比率」をご紹介します。

営業経費+支払利息割引料
————————×100
    売上総利益

ちょっと分かりにくくなってきましたが、まず名称の整理からはじめましょう。

・営業経費(人件費、家賃、光熱費、消耗品などの販管費)
・支払利息割引料(銀行からの借入金に対する利息など)
・売上総利益(売上-仕入)

このような意味合いとなります。そして、理解しやすいように具体的な数値で考えてみると、

・営業経費・・・・・ 50万円
・支払利息割引料・・・6万円
・売上総利益・・・・・70万円(売上100万円-仕入70万円)

これを算出式にて計算すると「80%」となります。
この損益分岐点比率は100%を基準とし、低ければ低いほど良いとされ、同時に低いほうが「売上減少」に対する耐久力が強いとされています。

具体例の80%でいうと、20%未満の(14万円未満)売上総利益の減少であれば、黒字を確保できるという意味合いとして捉えていいでしょう。

つまり、いわゆる「利益がトントン」の状態が100%であり、それを下回ると「黒字」、上回ると「赤字」といったイメージ
したがって会社としては、100%を下回る数値を目指すこととなります。

ここで日本公庫のデータをみてみましょう

・中古自動車小売業 105%~126%
・自動車一般整備業  99%~112%
・自動車車体整備業 103%~110%

いかがでしょうか。ほぼ100%を上回っています。
この数値から読み取れることは、経営の厳しい会社が多い業界だということ。

参考までに、従業員規模別ではなく「業種別経営指標」には、「黒字かつ自己資本プラス企業の平均」が記載されていますので、同じようにみてみましょう。

・自動車小売業    93.9%
・自動車一般整備業  99.5%
・自動車車体整備業 102.8%

やはり業績のよい会社は100%を下回っているようです。

ただ、車体整備業だけが102.8%となっています。
これについては、「税引前当期純利益」が黒字となった企業を対象としているようですので、おそらく雑収入等が関係しているのかもしれません。
この点を説明すると複雑になるのでスルーしましょう。

一般的に経営者の頭のなかには、「売上が○○万円あればトントン」といったおおよそのイメージがあると思います。
それはそれで結構なのですが、できれば決算書等から数字を拾って一度計算してみてはいかがでしょうか。

おおよそのイメージからかけ離れていたり、あるいは初めてみるような数字だったりするかもしれません。
ぜひ会社の現状把握にご利用ください。

~仕事をもっと、おもしろく!~
社会保険労務士/自動車整備経営コンサルタント 本田淳也

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