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こんにちは、青森市の社会保険労務士、本田淳也です。
自動車流通新聞の6月コラム記事のご紹介です。
自動車整備士であれば、自分のクルマの修理は勤務先のリフトや工具を使って作業をするのが一般的。
ただその際、労災事故が発生したらどうなるのか、勤務時間内に作業してもいいの?など、いくつかの疑問点が浮かび上がります。
相談事例を通して解説しましょう。
以前、遠方のガソリンスタンドの経営者からこんな相談がありました。
「店員で自分の勤務が終わった後にマイカーを修理していたり、ときには勤務時間内でもタイヤ交換などをしているときもあるのですが、こんな時に労災事故が起きたら責任はどっちになりますか?」。
確かに整備はリフトや工具を使うため、衝突や巻き込み、挟まれるといった労災事故が起きやすい職種ではあります。
事実、私も整備士2年目の頃、誤ってハンマーで指を叩いてしまい病院に行った記憶があり、社労士となった後も経験不足や慣れを原因とした労災事故を見かけてきました。
今回のご相談にお答えする前に、まず労災事故として認定されるには、業務に対する「遂行性」と「起因性」があり、いずれも満たしている必要があります。
「遂行性」とは、事業主の支配・管理下で業務に従事している状態を指し、通常勤務時間内であれば遂行性は認められるケースが多いでしょう。
もう一方の「起因性」は、その負傷が業務によって起きたものかどうか。
負傷であればシンプルで分かりやすいものの、疾病の場合は因果関係の度合いで認定されるか否かが異なってきます。
今回のご相談については、勤務時間内なのか、勤務時間外なのかで分けられます。
後者の勤務時間外の場合、プライベートな時間であり、事業主の管理下で業務を行っているワケではないため、何らかの事故が起きても労災は認定されない可能性が高いでしょう。
ただ、だからと言って勤務時間内なら労災認定されるというワケでもありません。
なぜならマイカーを修理しているワケで、「事業主の管理下で業務を行っている」とは言い難いからです。
なかなか判断が難しいケースですが、マイカー修理を「業務」と捉えるか否かで結果が異なってくると思います。
もうひとつ気になるのが、いくら暇だからといって勤務時間内にマイカーを修理するというのは、会社として規律に問題があるようにも思えます。
とは言っても、リフトがあるのにそこでマイカー整備不可にしたら、さすがに従業員から不満が出るでしょう。
したがって、「マイカー修理等は原則勤務時間外に作業をしてもらい、一応その際に事故が起きたら労災は使えないから充分注意してね」、と事前に伝えておくのがいいのではないですかと回答をしました。
従業員の不満を解消しつつ、出来れば満足度も向上させながら会社のリスクも低減する、そんな仕組みを作っていきましょう。
社員がイキイキ働く組織づくりを目指す
社会保険労務士/自動車整備コンサルタント 本田淳也(青森市)