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外国人技能実習制度とは・・・7割にも上る受入れ先企業の法令違反~その二~

文章を書くことの難しさを日々痛感している、青森市の社会保険労務士、本田淳也です。

高額な来日費用と企業の法令違反

外国人技能実習生が来日する際、100万前後の費用がかかると言われています。(日本で考えると1,000万程)
その多くは自国の”送り出し機関”(仲介会社)に支払うビザやパスポート費用、保証金等になりますが、それにしても高額すぎるという印象は否めません!

さらに問題になるのが、受入れ先企業(実習先、というより勤務先)が法令を遵守しているかどうか!
平成28年に全国の労働局や労働基準監督署が実施した監督調査では、70.6%の受入れ先企業で、労働基準関係に対する法令違反が認められています。
主な違反事項は、
・労働時間(23.8%)
・機械等の安全基準(19.3%)
・割増賃金の支払(13.6%)
書類送検は、5672事業所のうち40件。

事例:虚偽の帳簿書類の提出や臨検妨害などを繰り返した事業主らを逮捕した上で、賃金不払等により送検

・縫製業の事業場で実習中の技能実習生から、事業場から支払われている賃金が最低賃金額を下回っているなどの申立がなされた。
・事業場に立入調査を実施したところ、事業主と監理団体の代表者は、労働基準監督官に対して虚偽の記載をした帳簿書類を提出するなどし、さらに、監督官が関係先に立ち入るのを妨害したり、関係者との口裏合わせなどを繰り返しいたことが発覚したため、事業主らを逮捕した。
・捜査の結果、事業場に所属するすべての技能実習生4名の賃金について、月額6万円程度しか支払われておらず、また、時間外・休日労働に対しても時間単価が400円程度となっており、最低賃金に満たない賃金及び割増賃金、総額約500万円が支払われていなかった。
逮捕した監理団体の代表者を取り調べた結果、この事業主の賃金不払いについて関与していることが明らかになった。

監理団体の役割・・・毎年5,000人程が失踪する現実!

ほとんどの受入れ先企業は、監理団体を通して実習生を雇用することとなります。
監理団体とは一体どのようなものでしょう。
主な役割としては「技能実習の適正な実施および技能実習生の保護」だと思います。
しかしながら上記の例をみると、本来の役割を果たさなかっただけではなく、事業主と共謀して法令違反をしております。これがごく一部の監理団体および受入れ先企業であれば改善の余地が見込めますが、業界では“氷山の一角”とも言われています。
また、月100時間以上の時間外労働や不適切な賃金控除など・・・そんな情報をメディアや専門誌で見かけることも少なくありません。
さらに、毎年5,000人程の実習生が失踪しているのです。その理由のすべてが賃金不払い等ではありませんが、受入れ先企業になんらかの不満を持っているからこそ失踪するのだと思います。

継続可能な制度にするためにも・・・

多くの問題を抱える外国人技能実習制度ですが、この制度が日本の企業や実習生の将来に大きく貢献しているのも事実。当然ながら“優良な送り出し機関”、”きめ細かな対応をしている監理団体”、”法令順守の意識が高く全社員でサポートする受入れ先企業”も多く存在するでしょう。
このような適切な対応を取っている団体や企業、そして希望を持って来日している実習生のためにも、許認可の見直しや監督指導の徹底、罰則規定の強化など、窓口となっているJITCO(国際研修協力機構)を中心に議論を交わし、継続可能な制度としてもらいたいものです!

社会保険労務士 本田淳也(青森市)







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