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こんにちは、青森市の社会保険労務士、本田淳也です。
今回は自動車流通新聞12月コラムのご紹介です。
整備士の仕事は、機械を使う、車両下で作業する、クルマ移動があるなど、一歩間違えると大事故につながる現場でもあります。
もし労災事故が発生したらどうなるのでしょうか。
社労士業をしていると、定期的にと言ってもいいぐらい労災事故の連絡が入ります。
その多くは労災保険の療養補償給付という病院および薬局代がかからなくなる手続きで済むのですが、中には会社の経営に大きな影響を与えるケースもあります。
数年前、現場で作業している方が障害を負うような大ケガをしたため、会社へ損害賠償請求をしたいと相談に来ました。
筆者としては労災保険を中心とした全体的な流れを説明しつつ、その後は専門である弁護士さんを紹介し進めてもらったのですが、その金額は被災者も30代と若かったため数千万にも上ります。
労災事故が発生した際、会社には5つの責任があります。
①刑事上の責任、②民事上の責任。③補償上の責任、④行政上の責任、⑤社会的な責任で、損害賠償は民事上の責任となり、労災保険での対応は補償上の責任、労働基準監督署から書類送検されるのが刑事上の責任となります(図表参照)。
この中でも会社経営の根幹を揺るがしかねないものが前述した損害賠償請求です。
会社には労働契約法で義務付けられている「安全配慮義務」というものがあり、これは「災害が起こるかも知れない」という可能性を事前に察知し、その防止策を講じることにより、労働者の安全や健康を守るというもの。
朝礼での注意徹底や張り紙、防止策など様々な手法が考えられます。
この安全配慮義務は、会社が労働安全衛生法を守っているだけでは履行したことになりません。
したがって法定基準“以外”の労働災害発生の危険防止についても、会社は安全配慮義務を負っていると言えるのです。
つまり労働安全衛生法上の刑事責任を免れることと、民事上の損害賠償責任は、”必ずしも一致するわけではない”ということ。
大きな労働災害が発生した場合、安全配慮義務違反による損害賠償請求を受ける可能性があるということになります。
会社としては、労災保険給付の限度で責任を免れるものの、カバーされていない精神的苦痛に対する「慰謝料」や、後遺症が残った場合の「逸失利益」(事故によって後遺症を負わなければ得られたであろう将来の収入)については、損害賠償の責任が問われます。
また気になるのは、どの程度まで配慮していれば安全配慮義務を尽くしているか・・・これについては明確な基準がないため、事案によって判断する事となりますが、実際100%義務を果たしていると認定されるケースは結構難しいように感じています(一部過失相殺はありえますが)。
以上から、整備士本人のためにも労災事故が発生しないよう定期的に注意徹底や研修を実施するなど未然に防ぐ努力を怠らないようにしましょう。
社員がイキイキ働く組織づくりを目指す
社会保険労務士/自動車整備コンサルタント 本田淳也(青森市)